植田正治×佐野史郎×安珠 
「つゆの”もう”ひとしずく」

ギャラリー・トーク

8月 1日 [火] 18:00-20:00
佐野史郎  安珠

8月 11日 [金] 18:00-20:00
佐野史郎 ゲスト:加藤和彦

8月 20日 [日] 16:00-18:00
佐野史郎 安珠 ゲスト:金子隆一

 

© Shoji Ueda Office
© Shoji Ueda Office

 


 

●概 要

 
映画監督を手がける俳優・佐野史郎が、静止画を用いた映像作品である画ニメ「つゆのひとしずく~植田正治の写真世界を彷徨う~」
を制作しました。
NADiffでのインスタレーション『つゆの”もう”ひとしずく』は、同作品の世界を、「イメージ構築の原点となった植田正治の写真」「小泉八雲の言葉」「フォトグラファー安珠による撮影の現場写真」「加藤和彦のオリジナルサウンド」をもとに、佐野史郎が構成いたします。
植田正治の写真。安珠の写真。加藤和彦のサウンド。これらが小泉八雲の言葉と響き合い「ありもしない街」を彷徨う男の「ありもしない時空」がギャラリーの中に出現します。

*「つゆのひとしずく」=小泉八雲が1902年に発表した随筆「露のひとしずく」(平井呈一訳『怪談・骨董 他』恒文社・所収 )より引用。

*画ニメ公式サイトhttp://www.ganime.jp
 
展示構成: 佐野史郎、小川功
音楽: 加藤和彦
企画協力:㈱アァベェベェ、AGENCE ROCAILLE、植田正治事務所
製作協力:東映アニメーション㈱、㈱幻冬舎エムディー、㈱アトムエックス、ART BY XEROX、マトリックスInc.
 
【 画ニメ「つゆのひとしずく~植田正治の写真世界を彷徨う~」 】
写真●植田正治  音楽●加藤和彦  言葉●小泉八雲  監督/脚本●佐野史郎
企画製作・発売元:東映アニメーション 販売元:幻冬舎 価格:3,129円(税込)
 
ナディッフ・オリジナル限定セット(限定200set)
[サイン入りDVD(3,129円)+植田正治オリジナル・バインダー(1,680円)+ロディア・ブロックメモ(336円)] セット価格4,725円
 
*ご予約いただいたお客様には、植田正治オリジナル・ポストカードをもれなく差し上げます。ほか植田正治の写真集、コロタイプ・ポートフォリオ、Tシャツ、グッズを取り揃えます。
 
「画ニメ」シリーズ 全作一同に展示販売 第一弾全8本、同時リリース 各3,129円
 


 

●企画関連展

 
「つゆのひとしずく<小泉八雲と植田正治>」
植田正治写真美術館(鳥取県伯耆町)  会期:7月15日(土)~10月15日(日)毎週火曜日休館
画ニメ「つゆのひとしずく」のイメージをベースに構成。
小泉八雲の文章を通して植田正治の世界を読み、植田正治の写真を通して小泉八雲の世界を見るという試みです。
http://www.japro.com/ueda/
 


 

●Artist Statement


 
 神田神保町の美学校で中村宏氏の元、空気遠近法を学んでいた1974年、私は写真をやっていた高校時代の友人と共に故郷の松江で二人展を開いた。
 なじみの書店兼画材屋の一角のギャラリーを、ご主人が心安く貸してくださったのだ。

 友人は写真、私は覚えたての細密な鉛筆画でシュルレアリスティックな作品に挑み、悦に入っていた。
作品はどうしようもないものばかりで思いかえすと赤面するが、若気の至り。
 なんとも無謀な試みではあったが、「何かを表現したい」という欲求は人一倍強かったようだ。

 19歳。翌年に初舞台を踏む役者は、実は先にこのようなことをしていた。
 アカデミックな世界に背をむけ、後に唐十郎氏の元で芝居を続けたこととも結びつき、いっそう生意気な自分を思い返して恥ずかしい。

 今回の「つゆの “もう” ひとしずく」は、だから、それ以来、32年ぶりのギャラリーでの発表ということになる。
 
 どこまでも「松江」「出雲」「山陰」といった磁場から離れられない私が、やはり同じ島根半島は境港で写真家としての信念を貫いた植田正治の作品に触れ、 その魅力にとり憑かれたのは、実はここ数年のことである。

 遅れて来た中年男は、しかし、数十年をとり戻すかのように植田作品に夢中になった。

 その写真をモンタージュして作ったのが、映像作品「つゆのひとしずく」である。

 今回は、その作業行程の側面を、このスペースで追体験していただこう、あるいは覗き見ていただこう…との試みである。

 写真以外にも、松江、境港、大山といった植田正治縁の山陰の地、あるいは古きよき東京の匂いがまだ残る神田においては金子國義氏の古書店 をお借りし、実写部分のロケを敢行した。

 そして、植田正治を敬愛する写真家、安珠に、その舞台裏を記録していただいた。
 ここでは、その、安珠作品をじっくりと味わっていただきたい。

 監督し、演出し、出演する合間に、私は安珠のカメラの前で、植田正治を演じた…いや、ここに晒されている私こそが、誰でもない私であるような気もしてくる。

 作品では、やはり、松江、山陰縁のラフカディオ・ハーン=小泉八雲の言葉をちりばめ、アイルランドのケルト文化の残る土着性と、出雲の 神々の国を通底させようと試みた。

 妖精と妖怪の邂逅というわけである。

 東西、南北、夢と現実、生と死…矛盾し、相反するものを分け隔てない世界。

 だから、ここに描かれているのは、そして、この日々は「死者の観た夢」。

 今回の作品に取り組むにあたって、ずっと想い描いていたテーマである。


 ギャラリー空間に流れている音楽は、加藤和彦氏の書き下ろしである。作品中では、サウンドエフェクト等の使用により、抜け落ちてしまって いる部分の楽曲も、ここではすべてお聴かせすることができる。
 氏の交響曲のイメージ作品としてとらえることもできるかもしれない。
 砂、乗車券、写真機、風船、写真集…作品に登場する品々もできるかぎり揃えてみた。
 それらの品々や、植田作品、小泉八雲、加藤和彦といったそれぞれの表現者の、そして、それを “もう” ひとつのまなざしでとらえた安珠の、そして、彼等に身をゆだねることでしか成立しない、この空間が、ナディッフに「現実に」揃えられている表現物の数々と繋がっているのも心地よ い。

 ギャラリー空間の外であなたが手にした写真集の、あるいは文章の、音楽のひとつが「つゆのひとしずく」 あるいは「つゆの “もう” ひとしずく」のどこかに紛れ込んでいるかもしれない。

 すべてはバラバラで、ひとつに繋がっているのだ。

 そう、ギャラリーに放り出されているポストカードのように。

 植田作品をポストカードにして、あれやこれやとモンタージュを試みてできた「つゆのひとしずく」。
 
 是非、あなたにも「つゆの “もう” ひとしずく」を見つけていただきたい。

             佐野史郎
 


 

●PROFILE

 
植田正治 うえだ・しょうじ
 
 1913年鳥取県に生まれる。32年に上京し、オリエンタル写真学校に入学。卒業後、故郷に帰り19歳で営業写真館を開業。この頃より写真雑誌や展覧会に次々に入選。以後精力的に作品を発表し「少女四態」などの群像演出写真をはじめ、砂丘などを舞台に被写体をオブジェのように配置した作品の数々が国内外で高い評価を得る。54年第2回二科展賞受賞。75年第25回日本写真協会賞年度賞受賞。78年文化庁創設10周年記念功労者表彰。89年第39回日本写真協会賞功労賞。95年鳥取県岸本町(現伯耆町)に植田正治写真館開館。96年フランスより芸術文化勲章を受章。2000年7月4日死去。
 
小泉八雲 こいずみ・やくも
 
 本名パトリック・ラフカディオ・ハーン。米国でジャーナリストとして活躍した後、1890年に雑誌専属の旅行記者として来日。松江に移り島根県松江尋常中学校の英語教師に赴任。西田千太郎と知り合い、武家の娘小泉セツと結婚する。1891年より熊本市の旧制第五高校講師として勤務。その後神戸で新聞記者として働き、1896年日本に帰化し小泉八雲と改名。同年東京帝国大学文科の英文学講師となる。生涯を通し日本に関する多くの本を書き、米国で出版。西洋に日本の風土や民俗を紹介する役割を担った。代表作に『日本雑録』『怪談』『心』『日本の面影』などがある。1904年9月26日死去。
 
佐野史郎 さの・しろう
 
 1955年島根県松江市出身。劇団シェイクスピアシアター、状況劇場を経て、86年林海象監督「夢みるように眠りたい」で初主演、映画デビュー。以後数多くのTV・映画・舞台に出演。92年、TVドラマ「ずっとあなたが好きだった」の冬彦さん役でゴールデンアロー賞を初めその年の賞を総なめにし冬彦さんブームを起こす。99年には初監督作品「カラオケ」が公開され、映画監督としてデビューを果たす。また執筆・音楽活動など多方面で活躍中。近著に「怪奇俳優の演技手帖」(岩波アクティブ新書)、最新アルバム「short movies」(SPEEDSTAR MUSIC)、出演映画「太陽」アレクサンドル・ソクーロフ監督がある。http://www.kisseido.co.jp
 
安珠 あんじゅ
 東京出身。モデルにスカウトされ、来日したジバンシーと契約し渡仏。世界各国のヴォ-グやエルなどのファッション誌を飾り、コレクションに多数出演し、国際的に活躍。88年に帰国し、写真家へ転身。以後、文章を織り交ぜた物語のある独自の写真世界を作っている。主な作品集に、「サーカスの少年」、「少女の行方」、「星をめぐる少年」、写真絵本「小さな太陽」など多数。安珠特集「Natural Glow」(SOCYM)も好評発売中。広告や雑誌連載の他、講演や審査員でも活躍中。http://www.anju.jp
 
加藤和彦 かとう・かずひこ
 
 作曲家、歌手、ギタリストとして活躍する、日本の音楽界を代表するサウンドクリエイタ-。1960年代に「ザ・フォーク・クルセダーズ」を結成し、『帰ってきたヨッパライ』が大ヒット。1972年には「サディスティック・ミカ・バンド」を結成。ソロアーティストとしても数々のアルバムを発表。映画音楽、スーパー歌舞伎、舞台音楽なども手がけている。
 
■ゲスト・プロフィール
 
金子隆一 かねこ・りゅういち (東京都写真美術館専門調査員)
 
日本写真史、特に大正・昭和期のピクトリアリズムの研究における第一人者。様々な写真展を企画・協力し、編・著書も多数。2005年、東京都写真美術館で行われた「植田正治・写真の作法」展のキュレーションを担当した。
 


 

●お問い合わせ

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150-0013 東京都渋谷区恵比寿1-18-4 NADiff A/P/A/R/T 1F
TEL. 03-3446-4977

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