布施琳太郎 書籍ダブル刊行記念展示
「ふたつでなくひとつであること、
あるいはひとつになれないことのメカニズム」

 定休日:月曜日

営業時間:12-20時 

(※12月8日(金)19時閉店、12月16日(土)18時閉店、12月22日(金)19時閉店とさせていただきます。)

  • 布施琳太郎『いつまでも明け続ける夜のなかで』(2021年、Photography = Naoki Takehisa)

    布施琳太郎『いつまでも明け続ける夜のなかで』(2021年、Photography = Naoki Takehisa)

    布施琳太郎『いつまでも明け続ける夜のなかで』(2021年、Photography = Naoki Takehisa)


 
 

●概要

NADiff a/p/a/r/tでは、アーティスト・布施琳太郎の2冊の著書『涙のカタログ』(PARCO出版)、『ラブレターの書き方』(晶文社)の刊行を記念した展示「ふたつでなくひとつであること、あるいはひとつになれないことのメカニズム」を開催いたします。
布施琳太郎は1994年生まれ、「新しい孤独」をテーマにiPhoneの普及以降の過剰につながる社会での人間のコミュニケーションの在り方や変化問題意識を模索し、絵画や映像、インターネットを会場とした展覧会開催、そして批評や詩などの言葉を通した表現を試みています。

この度刊行された作家初の詩集『涙のカタログ』(PARCO出版)は「涙」という現象を主題として、人間の中の矛盾や定義の出来ない曖昧さを訴求し「海」「死」「性」のモチーフへと広がりながら1冊の中で世界が交錯します。一方12月19日に刊行する『ラブレターの書き方』(晶文社)では過剰につながる現代社会において、二人また個のつながりで世界を作る方法としての「ラブレター」の定義を、歴史や文学など美術にとどまることなく参照しながら論じる1冊です。

刊行記念となる本展では2冊の著書の起点にもなった2つのインスタレーション作品を展示いたします。新しい孤独に向き合い思考し続ける布施の表現を、本の中の言葉とともにご高覧ください。

 
 


 
 
僕にとっての芸術。それは「ふたつのものをひとつにすること」です。これは『涙のカタログ』と『ラブレターの書き方』という二冊の本を書き終えてはじめて理解したことです。しかしそうした帰結を、批評『新しい孤独』で文筆活動を開始した僕が述べるのを唐突に感じる方もいるかもしれません。だけど僕が考えたかった「孤独」というのは、実は「複数形の孤独」(solitudes)だったのだと今は思う。 
2016年にはじめて行ったキュレーション展は『iphone mural(iPhoneの洞窟壁画)』だった。そこで僕はiPhoneをはじめとしたスマートフォンを前にした身体を、洞窟のなかを歩き、そしてうねった壁面に描く身体と紐づけようとしました。つまりふたつの異なる身体を、ひとつのギャラリーのなかで同一のものとして表現しようとしたです。そうした「ふたつのものをひとつにすること」は僕の活動と人生の根底にずっとあったと思います。 
  
今回の展示では2021年の2月と10月に、それぞれ異なるホテルに滞在してつくったふたつの作品を展示します。ひとつは展覧会タイトルと同名の『ふたつでなくひとつであること、あるいはひとつになれないことのメカニズム』です。これは京都にあるBnA Alter Museumでのレジデンスプログラムの際に制作した作品で、ランダムに表示される二個の平仮名が意味を持ったり意味を持たなかったりするものです。もうひとつの作品は熱海にあるホテル・ニューアカオのバスの待合所で制作したもので、毎日の日出と日没の瞬間にだけ、海の水平線と太陽が重なり合う瞬間にだけ、ラブレターの朗読を流すものです。 
これらの制作を含む半年ほどの期間、僕は石巻や金沢、下北沢、京都などに滞在しつつ人生でもっとも多くの「書く時間」を過ごしました。詩やエッセイ、批評、ラブレター、プログラム、そして小説(これだけ未公開)を書いていたのです。その時期に書かれた言葉たちがなければ『涙のカタログ』や『ラブレターの書き方』を書くことはできなかったと思います。 
  
二冊の本を書きながら少しだけ自分の作品のことが分かりました。だけどまだ分からないことも沢山あって、世界には驚きがある。それでもこれらの作品は、今後の僕が活動し、制作をつづけていく上で、とても重要な場所になると考えています。僕が今言えるのは「ふたつのものをひとつにする」メカニズムが、どのような希望と危険性を持つのかを考え続けたいということです。 
 
 

布施琳太郎

 
 


 
※展示作品『いつまでも明け続ける夜のなかで』は、会期中の日出と日没の時間にのみ音が流れます。
(日出の時間帯は店舗営業外となり入場いただけません。)
日出と日没の時間はこちらからご確認ください。※記載されている時間帯と実際の日出、日没の時間に多少の差異がございます。インスタレーションの流れる時間も5分前後のずれが生じる場合がございます。ご了承くださいませ。
 


 

●イベント 終了いたしました。
 
パフォーマンス「ふたつになるためのメカニズム」+記念トーク

 
12月8日(金)にはNADiff a/p/a/r/t店内にて、布施琳太郎による新作パフォーマンスと書籍刊行記念トークイベントを開催いたします。ぜひご参加ください。また本イベント時より12月19日に刊行する『ラブレターの書き方』を先駆けてご購入いただけます。
 
登壇者: 布施琳太郎
開催日:2023年12月8日(金)19:30-21:00 (開場:19:15)
開催場所:NADiff a/p/a/r/t店内
参加費:1,100円(税込)
定員:40名



 

●書籍情報
 
 
『涙のカタログ』


発行日:2023年11月11日
発行元:PARCO出版
著者:布施琳太郎 
仕様:B6判、112頁
カバーイラスト:押見修造
装丁:八木幣二郎
定価:2,200円(税込)
>>NADiff Online
 
 

『ラブレターの書き方』


12月8日(金)のイベント時よりNADiffにてa/p/a/r/tにて 先行発売!
一般発売日:2023年12月19日
発行元:晶文社
著者:布施琳太郎 
編集=吉川浩満、石神俊太
装丁=八木幣二郎
仕様:四六判並製 344頁
定価:2,200円(税込)
>>NADiff Online

 
 


 
 

●PROFILE
布施琳太郎 | Rintaro Fuse

写真=岡崎果歩

 
 
アーティスト。1994年生まれ。東京藝術大学美術学部絵画科(油画専攻)卒業。東京藝術大学大学院映像研究科(メディア映像専攻)修了。スマートフォンの発売以降の都市における「孤独」や「二人であること」の回復に向けて、社会を成立させる日本語やプログラム言語、会話などを操作的に生成し直すことで、映像作品やウェブサイト、絵画、ボードゲームなどの制作、詩や批評の執筆、展覧会のキュレーションなどを行っている。
主な活動として個展「新しい死体」(2022/PARCO MUSEUM TOKYO)、廃印刷工場におけるキュレーション展「惑星ザムザ」(2022/小高製本工業跡地)、600ページのハンドアウトを片手に造船所跡地を巡る展覧会「沈黙のカテゴリー」(2021/名村造船所跡地〔クリエイティブセンター大阪〕)、ひとりずつしかアクセスできないウェブページを会場とした展覧会「隔離式濃厚接触室」(2020)など。参加展覧会に「時を超えるイヴ・クラインの想像力」(2022/金沢21世紀美術館)など。『文學界』『美術手帖』『現代詩手帖』『ユリイカ』への寄稿をはじめとして執筆活動でも注目を集める。受賞歴に、平山郁夫賞(2022)、第16回美術手帖芸術評論募集「新しい孤独」佳作入選(2019)。Forbes JAPAN 30 UNDER 30 2023「世界を変える30歳未満」にも選出。2023年11月、第一詩集『涙のカタログ』(PARCO出版)刊行。2024年3月に国立西洋美術館はじめての現代美術展「ここは未来のアーティストたちが眠る部屋となりえてきたか?――国立西洋美術館65年目の自問|現代美術家たちへの問いかけ」を控える。
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