大山エンリコイサム「Paint Blister」

営業日:木、金、土、日、祝

営業時間:13-19時

  • ffigurati_366_key_visual_a

    Enrico Isamu Oyama, FFIGURATI #366|Digital rendering|©Enrico Isamu Oyama

    Enrico Isamu Oyama, FFIGURATI #366|Digital rendering|©Enrico Isamu Oyama

  • ffigurati_366__Digital_rendering_a

    Enrico Isamu Oyama, FFIGURATI #366|Digital rendering|©Enrico Isamu Oyama

    Enrico Isamu Oyama, FFIGURATI #366|Digital rendering|©Enrico Isamu Oyama

  • ffigurati_9_a

    Enrico Isamu Oyama, FFIGURATI #9, 2009|Acrylic aerosol paint on acrylic cube|182×91×40cm (each)|Artwork ©Enrico Isamu Oyama, Photo ©Shu Nakagawa

    Enrico Isamu Oyama, FFIGURATI #9, 2009|Acrylic aerosol paint on acrylic cube|182×91×40cm (each)|Artwork ©Enrico Isamu Oyama, Photo ©Shu Nakagawa


 

●TALK EVENT
大山エンリコイサム × 小田原のどか
オンライン配信トークイベント 「ストリートアートと彫刻、公共性をめぐって」

 
登壇者: 大山エンリコイサム(美術家)、小田原のどか(彫刻家、評論家、出版社代表)
開催日: 2022年3月16日(水)19:00-20:30
開催方法: オンライン配信(zoom/ウェビナー)
参加費: 1,100円(税込)
 
チケット購入者は、配信後にアーカイブ動画を自由にご覧頂くことができます。
ライブ配信後のチケット購入も可能です。
トークイベントの視聴方法については、下記のチケット購入ページにて詳細をご確認ください。
チケット販売期間: 2022年3月31日(木)19:00 まで
アーカイブ視聴期間: 2022年3月31日(木)23:59 まで

>>TICKET ※販売終了

 


 

●概要

 
この度NADiff a/p/a/r/tでは、大山エンリコイサムの個展「Paint Blister」を開催いたします。
⼤⼭エンリコイサムは、エアロゾル・ライティングのヴィジュアルを再解釈したメディアを横断する表現により、現代美術の領域で注⽬を集めるアーティストです。1970-80年代のニューヨークで始まったライティング⽂化に影響され、その特有の線の動きを抽出し、再構成することで⽣み出された独⾃のモティーフ「クイックターン・ストラクチャー」(QTS)を国内外で発表。作品制作にとどまらず、これまで複数の著作を刊⾏するなど、ストリートアートの批評やライティング⽂化の研究にも取り組んでいます。コム デ ギャルソンやシュウ ウエムラといった企業やブランドとのコラボレーションも⾏ない、今年1⽉には、⼤⼭が⼿がけた横綱・照ノ富⼠の「三つ揃え化粧廻し」のアートワークが話題となりました。
東京とニューヨークの⼆拠点で活動する⼤⼭は、2020年の⼀時帰国以降、神奈川県⺠ホールギャラリーの個展など精⼒的な発表が続いたのち、本展は春に予定されたニューヨーク渡航前の最後の個展となります。

本展のタイトル「Paint Blister」(ペイントブリスター)は、塗膜と⽀持体のあいだに⽣じる気泡やふくれを指します。本来は避けるべきですが、下地処理をしない無許可のストリートアートにもよく⾒られる現象です。⼤⼭は、塗装作業や絵画作品の制作、カッティングシートによる壁画作品の施⼯など、みずからの創作のうちに観察される⼩さな出来事として、それを気に留めてきました。本展は、そのブリスターをめぐる作家の想像⼒を起点に構想されています。

ペイントブリスター:塗膜と⽀持体のあいだに⽣じる気泡やふくれ(イメージ)
ペイントブリスター:塗膜と⽀持体のあいだに⽣じる気泡やふくれ(イメージ)

本展では、NADiff a/p/a/r/tの各所に作品を設置。地下のNADiff Galleryでは壁⾯にブリスターを施し、⼤学院の修了制作で発表した初期作《FFIGURATI #9》を展⽰します。本作は当時、エアロゾル・ライティングの正⾯性を検討し、「純粋正⾯」という膜状のQTSのイメージから⽣まれた⽴体作品ですが、壁⾯のブリスターが重なることで、空間に溶け込んだ彫刻インスタレーションに変容します。

地上のガラス壁⾯には、カッティングシートを素材とした6メートルを超える新作のQTSを会期中限定で展⽰します。NADiff a/p/a/r/tの建築にあわせて制作された本作には、特殊なシートが⽤いられ、店外からはシート表⾯の微かなふくれが、店内からはシート裏⾯の気泡を⾒ることができます。さらに、⼤⼭とNADiff a/p/a/r/tのコラボレーションにより、本展のテーマに基づいて制作されたオリジナルのマルチプル作品も発表いたします。

⼤⼭にとって「ペイントブリスター」は、物質とメタファーの両⾯からストリートアートをひもとく概念であり、これまでの活動が⽰してきたQTSの多⾯的な可能性にさらなる次元を加える、本展に特有の新たなキーワードです。⼤⼭エンリコイサムの最新の作品世界に、是⾮ご期待ください。

協力= Takuro Someya Contemporary Art、株式会社中川ケミカル

 


 

●作家ステートメント

  
  
 皮膚の水ぶくれを意味する「ブリスター」(blister)という言葉は、より広く「気泡」や「水泡」を指すこともあります。たとえば壁を塗るとき、下地処理がおろそかだと塗面に細かい粒状のふくれが生じますが、それは「ペイントブリスター」(paint blister)と呼ばれます。壁と塗膜のすきまに残った水分が蒸発してエアポケットになり、膨張して塗膜を裏から押し広げ、表に現れてくる。塗膜を皮膚になぞらえるメタファーは絵肌や壁肌といった日本語にもありますが、通常は避けるべきこのブリスターに私が着目するのは、ストリートアートの問題と結びつくからです。少し遡りますが、展覧会のステートメントとして整理してみます。
  
  
 大学院生の頃、私は修了制作にむけてエアロゾル・ライティングの「正面性」を検討していました。壁に「名前」をかいて表現するライティングでは、文字のかたちに陰影や奥行きを与え、立体的にデザインします。それは壁面から手前(見る人の側)に競り出る立体性ですが、目に見えない裏の空間はあまり考えられていません。たとえば人体の絵なら、後頭部、背中、ふくらはぎ、かかとなど、前から見えない部位もふくめて空間の整合性が作られます。ライティングの立体性には、この見えない裏の領域がない。それには理由があります。
 最初期のライティングは文字が平坦でしたが、70年代にニューヨークでライターが急増すると、ストリートを埋め尽くした大量の「名前」から自分を見つけてもらうために、少しずつ文字が手前に競り出て、立体化しました。目的は他者に見られること。そのためライティングの立体性は、現実の立体物をトレースする写実絵画の立体性や、裏を省略したレリーフ彫刻の半立体性とは異なります。後者ふたつは、正確には三次元性です。現実の空間を遠近法で再現する。裏は見えないけど「ある」のです。ライティングの立体性では、裏は見えないのでも、省かれるのでもなく、そもそも存在しない。見られること、つまり「正面」のみが重要だからです。
 表と裏は、人間と物体の空間的、ないしは機能的な関係にもとづく「方向」ですが、正面は、視点と対象の視覚的な関係によって取り結ばれる「表象」です。そこには見ること-見られることをめぐる欲望の動き、視線のエコノミーがあり、強弱のダイナミズムがある。つまりライティングの立体性は、見られることへの欲望によって、表象のうちに膨れあがり、厚みを帯びた正面性の姿なのです。
  
  
 写し取られる三次元性と、自己生成する立体性。見えないけど存在する領域と、見られる領域のみがある存在。ライティングの造形には、現実の空間に由来する表と裏はなく、人の視線を欲する「正面」だけが強くある。イリュージョンのうちに膨張し、立体的な強度をまとった正面。それは競り出る運動のなかで振動し、その累乗によって純度の高い磁場をみずから形成した正面だと考えました。私はそれを「純粋正面」と呼ぶことにします。この特徴はクイックターン・ストラクチャー(QTS)にも通じています。
 この「純粋正面」という非物質的なアイデアを作品化するために私は、あえて絵画や映像ではなく、三次元的な物体のメディアである彫刻を選択しました。それが修了制作作品《FFIGURATI #9》です。絵画や映像はメディアそのものが裏を見せないため、「正面」と「表」の差異があいまいになります。それに対して、現実の空間に置かれる彫刻はかならず表と裏の方向があるため、それが解消された状況を作ることで、逆説的に「正面」の問題をするどく浮き彫りにすることができます。
 《FFIGURATI #9》は、QTSのかかれた2ミリほどの薄いアクリル板を、両側からアクリル立方体ではさんで自立させることで、両側でQTSが同じ見え方をする、つまり両側が「正面」という彫刻になっています。「純粋正面」の立体的強度は、あくまで表象の厚みのうちにある。それを現実の空間にインストールするには、QTSをそのまま立体化するのではなく、反対にフィルムや膜のような薄さに圧縮することで純化し、それを立体的な装置(アクリル立方体)で支えて提示することが必要でした。イリュージョンを支持体に載せている点で、《FFIGURATI #9》はやはり、彫刻的なしつらえを備えた「絵画」なのかもしれません。
  
  
 修了制作で展開した思考はその後、別の実践にスライドします。私は2013年頃に、カッティングシートを用いた壁画のインスタレーションを始めました。ある展覧会で、ガラスの壁面にシートのQTSを設置すると、透明なので逆側からシートの裏が見えます。シートの片側は白と黒で印刷されたQTSですが、もう片側は無地の接着面で、シート全体のかたちが見える。つまり、そちらが明確に「裏」です。さらにその裏面とガラスのすきまに、貼り合わせのときに混入した空気が、スキージで押し出しきれずに気泡として残っていました。
 一見これは取るに足らない事実ですが、私は興味を引かれました。表と裏がない、膜状の純粋正面というQTSのイリュージョンは、ひとたびカッティングシートという具体的な素材になると、薄さのうちに表と裏を孕んでおり、そこに気泡というミクロな空間さえ認められる。もちろん技術的な解決策はありました。ただ私には、かすかに立ち上がる気泡の空間が重要に思えました。表層と深層という二層構造に対する批評を感じたのです。
 たとえば家屋なら、目に見える壁紙や塗装は表層、目に見えない躯体や建材は深層です。しかしこの二層構造では捉えきれない領域もあります。壁紙の裏に繁茂するカビ、シールを剥がしたあとの粘着物、塗膜に現れるブリスター、カッティングシートの気泡は、表層でも深層でもない「表面の裏」という別の空間を示しており、そこにも微細な現象が生起している。あるいは平滑に舗装されたアスファルトがじつは多様な凹凸に溢れており、路上の水たまりがその誤差の揺らぎをまだらに可視化するように、世界のあちこちに表層と深層というモデルでは把握できない空間があり、膜のように薄く作動しています。私にとってブリスターは、それらすべてを象徴する言葉です。
  
  
 ブリスターという概念は、ふたつの面でストリートアートの特徴を捉えています。ガードレールの裏や歩道橋の手すりなど、都市のすきまに侵入して空間をアクティベートするこの芸術形式は、それ自体がまず都市のブリスター的な存在だというメタファーが可能です。一方で都市とストリートアートの接触面には、文字通りにブリスターの空間があります。エアロゾル塗料やペンキで無許可に描画された塗膜と、下地処理のされていないブロック塀やさまざまな素材の支持体はきちんと密着しないことが多く、しばしばヒビ割れたり、膜ごと剥がれ落ちることもあります。ストリートアートの主要なメディウムであるポスターやステッカーの作品は、裏に入り込んだ空気がシワになり、そこから破れることもあります。これはゲリラ的に制作されるストリートアートの自然な様態であり、新陳代謝する都市とアートの流動的な関係を示しています。
 このようにブリスターという概念は、メタファーと物質の両面からストリートアートをひもといてくれますが、それはクイックターン・ストラクチャーにも通じています。NADiff a/p/a/r/tの各所に作品を展開する本展「ペイントブリスター」では、まず壁面にブリスターを施した地下のギャラリーに《FFIGURATI #9》を展示します。もともと「純粋正面」という膜状のQTSのイメージから生まれた同作ですが、透明なアクリル立方体を媒介にしてQTSと周囲のブリスターが重なることで、空間に溶け込んだ彫刻インスタレーションに変容します。地上のガラス壁面に設置されるカッティングシート作品《FFIGURATI #366》では、本作のための特殊なシートを使用することで、店外からはシート表面のふくれが、店内からはシート裏面の気泡が見えてきます。そして本展のコンセプトに基づいたオリジナルのマルチプル作品《FFIGURATI #367》も発表します。このように本展では、ブリスターをめぐる想像力をさまざまな仕方でクイックターン・ストラクチャーに織り交ぜることで、各作品がゆるやかに結びつき、展覧会を構成しています。

大山エンリコイサム

 


 

●マルチプル作品

 
本展のテーマに基づいて制作されたオリジナルのマルチプル作品を発表いたします。
 
 
2000
(左)Enrico Isamu Oyama, FFIGURATI #367|2022|©︎Enrico Isamu Oyama
(右)FFIGURATI #367|Detail|©︎Enrico Isamu Oyama

 
 

《FFIGURATI #367》

 
作家:大山エンリコイサム
素材:アクリルプレートに彫刻 / carving on acrylic plate
サイズ: (H)499.0×(W)367.4mm(額込み) ※最終調整中/縦横1cmほど変動の可能性がございます。
制作年:2022年
⽣産数:30
作品証明書付き(エディションナンバー・作家サイン入り)
発送時期:2022年7月下旬を予定

詳細については、下記の「OIL by 美術⼿帖」にて2⽉24⽇(⽊)13時に公開いたします。
URL|https://oil.bijutsutecho.com/special/125


※エントリーの受付は終了いたしました
 
 


 

●PROFILE

 

Enrico Isamu Oyama in his Brooklyn studio|2018|Photo ©Collin Hughes
Enrico Isamu Oyama in his Brooklyn studio|2018|Photo ©Collin Hughes

大山エンリコイサム|Enrico Isamu Oyama

 
 美術家。エアロゾル・ライティングのヴィジュアルを再解釈したモティーフ「クイックターン・ストラクチャー」を起点にメディアを横断する表現を展開。イタリア人の父と日本人の母のもと、1983年に東京で生まれ、同地に育つ。2007年に慶應義塾大学卒業、2009年に東京藝術大学大学院修了。2011−12年にアジアン・カルチュラル・カウンシルの招聘でニューヨークに滞在以降、ブルックリンにスタジオを構えて制作。これまでにマリアンナ・キストラー・ビーチ美術館(カンザス)、ポーラ美術館(箱根)、中村キース・ヘリング美術館(山梨)、タワー49ギャラリー(ニューヨーク)、神奈川県民ホールギャラリーなどで個展を開催。『アゲインスト・リテラシー』(LIXIL出版)、『ストリートアートの素顔』(青土社)、『ストリートの美術』(講談社)、『エアロゾルの意味論』(青土社)などの著作を刊行。『美術手帖』2017年6月号を企画・監修したほか、コム デ ギャルソン、シュウ ウエムラ、JINS、アウディとのコラボレーションも手がける。2020年には東京にもスタジオを開設し、現在は二都市で制作を行なう。
http://www.enricoisamuoyama.net

 


 

●新型コロナウィルス感染予防対策

 
【お客様へのお願い】
・ご来場時にはマスクの着用をお願いいたします。
・ご来場時には手指の消毒をお願いいたします。
・37.5℃以上の発熱や咳、全身痛などの症状がある場合、ご自身の体調に不安のある場合は、くれぐれもご無理なさらずご来場をお控えいただきますようお願い致します。
・お客様同士およびスタッフとの距離を十分に取れる空間確保のため、入場制限を設ける場合がございます。
・大人数でのご来場はなるべくお控えください。
・万が一関係者などから新型コロナウイルス感染症の発症があった場合、連絡を差し上げられるよう、ご連絡先の記入をお願い致します。

【当店の対策】
・1階の店内入口にアルコール消毒液を設置しておりますので、入店の際は手指の消毒をお願い申し上げます。
・地下1階の搬入口の換気をし、展覧会会場の換気を行います。
・2時間に1度、螺旋階段の手摺や、鑑賞用の椅子のアルコール消毒を行います。
・当店スタッフは毎朝体温を測定し、健康状態を確認のうえ出勤しております。手洗いと手指消毒を徹底し、マスク着用で対応いたします。
 
>>営業時間・店内での新型コロナウイルス感染症の予防と感染拡大防止対策について
 


 

●お問い合わせ

ap_logo
NADiff a/p/a/r/t
150-0013 東京都渋谷区恵比寿1-18-4 NADiff A/P/A/R/T 1F
TEL. 03-3446-4977
営業日:木、金、土、日、祝
営業時間:13-19時
>>> shop info