「パレスチナ問題と表現の〈閾〉をめぐって」

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この度NADiff a/p/a/r/tでは、戦後芸術研究会によるシンポジウム「パレスチナ問題と表現の〈閾〉をめぐって」を開催いたします。

現代アラブ文学研究者・岡真理氏を講師に迎え、パレスチナ問題の今日の厳しい状況を読み解きながら、現地で生きるアーティストや市民による表現から、生存困難な過酷な状況下でも芸術は可能なのか、といった問題について議論します。

また、今回のシンポジウムにあわせ、芸術と政治との関係を考える手掛かりともなるタイトルを、岡真理氏、戦後芸術研究会からの推薦文と共に店内でご紹介いたします。

このシンポジウムを通じて、パレスチナ、そして私たちの身近なところにある「表現と政治」にまつわる諸問題について考察します。





2143人。そのうち子供約490人以上。女性約200人以上。高齢者約100人以上。これは、7月8日から始まったイスラエルによるガザ地区パレスチナ自治区侵攻で、8月30日停戦に至るまでの死亡した犠牲者の数です。ほとんどが民間のパレスチナ人です。(ちなみにイスラエル側は70名、内民間人6名です)。*パレスチナ保健相発表・アルジャジーラより

もちろん人の死は、数で計れません。一人ひとりそれぞれの人生、それぞれの生活、それぞれの未来があります。それでも、その数えられない死が数としてしか表現できないことに、やり場のない怒りを覚えます。

この期間、私たちはインターネットなどを通じ、この戦闘の殺戮を生々しく、ダイレクトに目撃することになりました。

しかし、この悲劇を止めることができませんでした。

世界各地で、「ガザ空爆」に反対するデモが起りました。これは、イスラエル国内テルアビブでも起りました。

でも、空爆を止めることができませんでした。

パレスチナの人々は、ありったけの力で叫び続けました。あらゆるメディアや表現が用いられました。
「殺戮を止めて!やめさせて!」西側の人々に「沈黙をしないで!」と叫び続けました。

けれども、西側諸国は殺戮を止めさせることをせず、「沈黙」したままでした。

なぜでしょうか?

私たちは、イスラエル/パレスチナ問題を対岸の火事として眺めることしかできないのでしょうか? パレスチナの人々の現実の生と死を目撃しながらも、私たちには何もできないのでしょうか? 東アジアの地、日本という一見「平和の場」(集団的自衛権行使すること等も含め)に暮らす私たちは、現在進行形であるパレスチナ問題とどのように向かい合えばいいのでしょうか? このイスラエル/パレスチナ問題をパレスチナから発せられた声を聞き取りながら、このことをあらためて問い直すことは急務に感じられます。

パレスチナで何が起っているのか。西側の、とりわけ日本の報道の何が問題なのか。私たちはパレスチナ問題をどのように受け止めればいいのか。そして、私たちに何ができるのだろうか──今回は、こうした問いを議論するために、この間パレスチナからの貴重な声を日本に伝えてきた岡真理さんをお呼びして、シンポジウムを開催いたします。
「戦後芸術研究会」は、これまで芸術と政治との関係を考える研究会を不定期で開催してきました。この間パレスチナをめぐって、アーティストだけではなくさまざまな人たちがさまざまな表現活動を行ってきました。その一方で、パレスチナの問題はたえずメディアの中で表象される〈外部〉の出来事をも考えさせられます。今回のシンポジウムを通じて、同時に芸術に何ができるのか/できないのか、そして私たちに何ができるのかを議論できればと考えています。

「戦後芸術研究会」

 

●プロフィール

 

岡 真理(おか・まり)
現代アラブ文学研究者。京都大学大学院人間・環境学研究科教授。東京外国語大学でアラビア語を学ぶ。在学時代に、パレスチナ人作家ガッサーン・カナファーニーの小説を読み、パレスチナ問題、アラブ文学と出会う。以来、現代世界の思想的課題としてパレスチナ問題について考え続ける一方で、パレスチナをめぐる政治問題について積極的に発言してきた。最近は学生・市民有志による朗読集団「国境なき朗読者」を主宰、朗読劇「The Message from Gaza ~ガザ 希望のメッセージ~」の脚本、演出を担当している。著書に『アラブ、祈りとしての文学』(みすず書房、2008年)、『棗椰子の木陰で 第三世界フェミニズムと文学の力』(青土社、2006年) ほか。


小倉 利丸(おぐら・としまる)
社会学者、経済学者。専門は現代資本主義論、情報資本主義論。富山大学教授。ピープルズ・プラン研究所共同代表。東京都出身。



戦後芸術研究会 以下メンバー

毛利 嘉孝(もうり・よしたか)
社会学者東京藝術大学准教授。専門は社会学、文化研究・メディア研究。主著に『ストリートの思想』(日本放送出版協会)、『文化=政治』(月曜社)、共著に『アフター・テレビジョン・スタディーズ』(せりか書房) 等。


清水知子(しみず・ともこ)
筑波大学准教授。専門は比較文学、文化理論、メディア文化論。著書に『文化と暴力』(月曜社)、『ドゥルーズ/ガタリの現在』(共著、平凡社)、訳書にネグリ/ハート『叛逆』(共訳、NHKブックス)、ジジェク『ジジェク自身によるジジェク』(河出書房新社) など。


古川美佳(ふるかわ・みか)
韓国美術・文化研究。女子美術大学非常勤講師。韓国の民衆美術運動、北朝鮮の美術。第3回光州ビエンナーレ「芸術と人権」展アシスタント・キュレイター。06年より東京GALLERY MAKIで「21世紀の東アジア文化論」を企画。共著『韓流ハンドブック』(韓国現代美術担当/新書館)、共著『光州「五月連作版画-夜明け」ひとがひとを呼ぶ』(夜光社) 等。


井口大介(いぐち・だいすけ)
美術表現者。主な展示、ブレーメン (ドイツ)、VOCA96 (上野の森)、ブラインド・デート (デンマーク・オデンセ美術館)、靖国の闇に分け入って (東京)、「伝えられ、伝えること・・・広島第二県女二年西組、関千枝子さんと共に」(G/マキ)、共著に「アート・検閲・天皇」(社会評論社) 他、企画展等組織。



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