「NADiffで学ぶ、現代アート連続講座」第2回レポート
「キーワードで読み解く現代アート」— フォーマリズム

開講日: 2018年 8月24日(金)

講 師: 小川希(Art Center Ongoing)

 

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NADiff a/p/a/r/tを教室にして始まった「NADiffで学ぶ、現代アート連続講座」
第一弾「キーワードで読みとく現代アート」の第2回目を8月24日に開催しました。
第1回目の「コンセプチュアル」に続き、吉祥寺にあるArt Center Ongoingの小川希さんを講師に迎え、今回は「フォーマリズム」のキーワードから現代アートを読みといていきます。
 

「フォーマリズム」という言葉、その響きだけでも難しそうな感じがしますが、小川さんは2時間という限られた時間で、難しいキーワードを嚙み砕いてわかりやすくお話してくださり、たくさんの作品を紹介してくれました。第一回の「コンセプチュアル」と今回の「フォーマリズム」、この2つのキーワードを押さえておくだけで、現代アートの楽しみ方がぐっと広がります。
 

今回のレポートでは、講座の冒頭「フォーマリズムとは何か」についての小川さんの解説を一部取り上げてお伝えします。 講座で紹介したアーティストは文末のリストをご参照ください。
 

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第一回目の講義で小川さんはコンセプチュアルアートとは、見えているものの先を見るものだと解説されました。(第一回「コンセプチュアル」講座レポートはこちら)
作者の制作意図と共に、社会状況や政治状況、歴史、作家がどういった状況で作品を作ったのかを知らないとみえてこないものがある作品が、コンセプチュアルアートといえます。

 

一方で今回取り上げる「フォーマリズム」と呼ばれる現代アートの流れにある作品は、目に見えるものが全てであるという考え方のもとにある作品を言います。「フォーマリズム」と「コンセプチュアル」はいわば対極の関係なのです。

 

「フォーマリズム」という言葉自体は、批評家のクレメント・グリーンバーグが、戦後の絵画作品における、抽象表現主義という大きな動向の中で提唱した言葉でした。人や風景をリアルに残したいのであれば写真を撮ればよい、歴史的なエピソードや物語を伝えるのであれば小説を書けばよい。四角い平面、絵具、そういった絵画を構成するメディウムを使って、そのメディウムでしかできないことを追求すること、何が描かれているかではなく、純粋に絵画を視覚することを突き詰めたのが抽象表現主義でした。
 

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抽象表現主義の作家として、第一に挙げられる作家といえば、ジャクソン・ポロックです。ドリッピングと呼ばれる筆やスティックに絵具を付けて飛散させて描く手法で描かれた作品を見たことがある人も多いのではないでしょうか。
東京国立近代美術館でも2012年に個展が開かれていましたが、小川さんが見に行ったときには隣のカップルが「これ俺でもできるよ」と言いながら、作品を見ていたそうです。

 

「すごく綺麗に花や花瓶が描いてあるというものではないから、ぱっと見ると、すごいとか、うまいというものには見えないです。でもこれって、子どもが落書きしたようにも見えながら、実際に描こうと思っても誰でも描けるものではないんですよ。色のバランスや形、構図、そういったものが計算されて作られていて、絵画の前に立ってみると分かるのですが、画面のなかに自分の視点が入って行って、目が画面の中で遊ぶことができるんですよね。何が描かれているということではなく、ただ、この絵を見ているとしか言いようのない感覚、目が絵の中でさまようというか抜けだせなくなるような感覚がある。本物を目の前にしたときに、絵の中で遊ぶって感覚が分かると思うのですが、それって言葉で説明しづらいですよね。」(小川さん・講座にて)

 

小川さん自身の原体験は、イギリスのテート美術館で高校生の時にマーク・ロスコの作品を見たことでした。絵画の前に立った時に、絵画の中に取り込まれるような体験をはじめてしたそうです。そういった体験は、アートが好きであったり、興味がある人なら一度はあるはずです。小川さんはその体験や感覚こそ、フォーマリズムを読みとく鍵になると解説します。
 
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「絵に感動したとき、その感動はどこからくるのか、という問いに対して、多くの言葉を費やしてその感動を解析しようとする批評家たちの言葉はやはり難しい。グリーンバーグは丁寧かつ計算された言葉で、その感覚を言語で語ろうとしているから、フォーマリズムとか抽象表現主義ってとても難しいんですよね。フォーマリズムの批評って、言葉のレベルがあがりすぎて、誰しもが理解できるものと乖離してきてしまっているところもある。けれども、フォーマリズムは難しいようにみえて、誰しもが享受しているはずの見方、考え方なので、言ってみれば、コンセプチュアルアートとは真逆。実際に接することで『わかる』ことができるんです。」(小川さん・講座にて)

 

ということで後半は、フォーマリズムの視点から戦後の現代アートの代表作をたくさん紹介していただきました。アメリカが世界をリードするためにムーブメントを作り上げた抽象表現主義からポップアートの流れ、1950年代、60年代の大量消費社会への文明批判的な、反芸術、ネオダダの流れ。1970年代には、表現が多様化し、絵画における大きなムーブメントがなくなり、「大きな物語」(ジャン・フランソワ・リオタール「ポストモダンの条件」1979年)は終わりを告げたのでした。
フォーマリズムは絵画だけではく、彫刻や映像においても、彫刻とは何か、映像とは何かを突き詰める動きへとつながっていきます。
 

小川さん推薦図書 藤枝 晃雄 『モダニズム以後の芸術: 藤枝晃雄批評選集』(発行: 東京書籍 2017年)
小川さん推薦図書
藤枝 晃雄 『モダニズム以後の芸術: 藤枝晃雄批評選集』(発行: 東京書籍 2017年)

 

現代アートは実際に見るのが一番。自分はどんな作品が好きなのかを知るためにも、いろんな作品を知っておくと、知識と体験がつながり、広がりができるのだと実感する講義でした。参加者の方からも、「すぐにでも作品を観に行きたくなる、楽しいお話でした」「理屈だけでなく作品をたくさん見ようと思いました」という感想が寄せられました。
 
 
次回の講座は9月14日(土)。
第3回のキーワードは「ポリティカル」
です。
第一弾の「キーワードで読みとく現代アート」は次回で最終回となります。
ポリティカル・アートとは、社会を批判的に表現したもの、または社会改善が制作動機にある芸術などに使われるものです。コンセプチュアルとフォーマリズムのキーワードから見ていった現代アートの歴史をふまえ、ポリティカル・アートの動向から現代アートの「今」を見ていきます。
 


 

●講座で取り上げたアーティスト

 
絵画の潮流
◆ジャクソン・ポロック
◆マーク・ロスコ
◆ウィリアム・デ・クーニング
◆ロバート・ラウシェンバーグ
◆ジャスパー・ジョーンズ
◆リチャード・ハミルトン
◆ロイ・リキテンスタイン
◆アンディ・ウォーホル
◆ジュリアン・シュナーベル
◆アンゼルム・キーファー
◆フランチェスコ・クレメンテ
◆リュック・タイマンス
◆マルレーネ・デュマス
◆ピーター・ドイグ
◆ママ・アンダーソン
◆ローラ・オーウェンス
◆杉戸洋
◆工藤麻紀子
◆落合多武
◆奈良美智
◆千葉正也
◆池田光弘
◆今津景

彫刻/インスタレーション
◆カールアンドレ
◆ダン・フレイベン
◆ドナルド・ジャッド
◆ロバート・スミッソン
◆ウォルター・デマリア
◆ジェームズ・タレル
◆ジェフ・クーンズ
◆アニッシュ・カプーア
◆アントニー・ゴームリー
◆ロン・ミュエク
◆オルファー・エリアソン
◆鬼頭健吾
◆冨井大裕

映像表現
◆ヴィト・アコンチ
◆ブルース・ナウマン
◆ビル・ヴィオラ
◆ペーター・フィッシュリ、ダヴィット・ヴァイス
◆ダグラス・ゴードン
◆ダグ・エイケン
◆ピピロッティ・リスト
◆マシュー・バーニー


 

●講座第一弾「キーワードで読みとく現代アート」 全3回

 
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第一回 コンセプチュアル

開催日:2018年7月20日(金)20:00-22:00 ※終了しました

コンセプチュアル・アートがわかると、現代アートは楽しい!

コンセプチュアルとは、視覚イメージだけでなく、言語を介すことが前提となったアート作品のことです。1960年代から70年代を通して台頭したコンセプチュアルな観点をもつアートの動向は、世界各地、そして日本国内でも多様な展開をみせました。
コンセプチュアルの先駆けといわれる、マルセル・デュシャンの作品から、今日のアート動向まで、コンセプチュアル・アートの事例をみながら現代アートの基本を学びます。
>>講座レポート

 

第二回 フォーマリズム

開催日:2018年8月24日(金)20:00-22:00  ※終了しました

フォーマリズムがわかると、現代アートを読み解ける!

フォーマリズムとは作品の主題や内容ではなく、作品にあらわれている「かたち」を重視する作品の解釈のことを指します。作家の感情や意図や、社会的背景、または鑑賞者の印象などを一切排除した批評理論は、ミニマリズムやコンセプチュアル・アートなど現代アートの芸術運動の発展に大きく寄与しました。フォーマリズム的作品の理解を通じて、現代アートを「読む」、スキルを身に着けます。
 

 

第三回 ポリティカル

開催日:2018年9月14日(金)20:00-22:00

ポリティカル・アートの動向を知って、「今」を知ろう!

情勢不安が高まるほど、政治と関係を結ぶ芸術への関心が取り戻される傾向がアートの世界にはあります。ポリティカル・アートとは、社会を批判的に表現したもの、または社会改善が制作動機にある芸術などにも使われるものです。
今日のアーティストが表現するポリティカル・アートの事例を見ながら、アート表現の射程を幅広くみてゆきます。
>>お申し込み

 


 

●講座お申し込み方法

 
要予約 / 前払い制(ご入金をもって、ご予約完了となります)

①NADiff ONLINESHOP : >>チケットご購入ページ ※クレジットカードでのお支払のみ(お支払完了後、ご予約受付完了のお知らせをお送りいたします)
②ナディッフアパート店頭 :現金でのお支払をご希望の方は、事前にご来店の上レジにてお申し込み下さい

 


 

●Profile

 
小川希(おがわ・のぞむ)
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1976年東京生まれ。2001年武蔵野美術大学卒。2004年東京大学大学院学際情報学府修士課程修了。2002年から2006年に亘り、大規模な公募展覧会『Ongoing』を、年一回のペースで企画、開催。その独自の公募システムにより形成したアーティストネットワークを基盤に、2008年に吉祥寺に芸術複合施設Art Center Ongoingを設立。現在、同施設代表。また、JR中央線高円寺駅~国分寺駅区間をメインとしたアートプロジェクト『TERATOTERA(テラトテラ)』のチーフディレクターも務める。
>> Art Center Ongoing
 


 

●お問い合わせ

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NADiff a/p/a/r/t
150-0013 東京都渋谷区恵比寿1-18-4 NADiff A/P/A/R/T 1F
TEL. 03-3446-4977

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