マグリット

孤児たち

1997年12月27日（土）〜 1998年1月20日（火）

「私は展覧会は見に行きません。退屈すきるからです。無数の複製や美術書かあるではありませんか」
ルネ・マグリット

異色のシュルレアリスト、ルネ・マグリットの未発表＜遺作＞4点を含む連作版画「孤児たち」（全12点）を展示いたします。

事物が歴史的に備えている象徴性、意味性を軽やかにはぎ取り、知覚に直接的にうったえる衝撃的なイメージを紡ぎだしていく手法はシュルレアリスム本来のものですが、他のシュルレアリストとは異なり、マグリットはポップ・アート以降、とりわけその後のグラフィック・デザインに大きな影響を与えたといわれています。
そうした評価は、日常的で平凡な事物一雲、空、リンゴ、鳥、月、樹木など一を、近代絵画的に構築するのではなく、むしろ自ら大胆に引用、流用（複製）していくことで平面（装置）を構成する方法に拠っているといえるでしょう。その平面性（グラフィズム）、また美術的コンテクストを軽々と超越して複製情報環境を先取りしていた点に、他のシュルレアリスムの作家にはない、マグリット独自の現代性と拡がりが確認できるのではないでしょうか。

80年代以降のマグリット評価が、そうした方法の脱領域的な拡がりを中心に語られているとすれば、マグリット絵画は現在のアート・シーンにおいても、依然アクチュアルな絵画として存在しているということか出来ます。
また今回の題名「孤児たち」は、マグリットによって生み出され、画家の死によって現在の地平の中に置き去りにされた数多くのイメージの断片のことだと理解することも可能なのではないでしょうか？

●マグリット関係資料をはじめ各種マグリット・グッズを取り揃えました。