野村佐紀子

「けはい」＋「きおく」

パート１……「けはい」1997年9月18日(木)→9月30日(金)

パート２……「きおく」1997年10月２日(木)→10月17日(金)

ニューエイジ・フォトグラファー野村佐紀子の写真展「けはい」＋「きおく」を、二つのパートに分け、展示いたします。

意識の制御を逃れた微かな「けはい」の記憶。「きおく］を辿ることで再び想起される気配。なにげない日常の中の「けはい」と「きおく」の循環に捧げられた写真。そうした希薄な空気の私的メモとしての写真があってもいいのではないか、と、野村佐紀子はつぶやきます。

レンズの前という「非日常」と本来の「日常」のあいだで揺れ動く同世代の裸の男女の、かすかな勇気と不安のさなかで彼らが見せる揺らぎやじれを、野村佐紀子は可能なかぎりの余白をもって受けとめようと試みています。写真が一つの意図や個性に従属するものではないという点において、また過剰な意味を排除する潔さにおいて、野村佐紀子は20世紀の表現の直系に位置し、同世代の熱狂的な共感とともにニューエイジを代表する写真家ということができるでしょう。

写真言語の基礎的な調整を、いったん危機に晒してまで耳を澄ます野村佐紀子の「けはい」と「きおく」に焦点をあわせてみたいと思います。